Summary

Windows Autopilot Device Preparationは、Windows 11向けに強化が進められている新しいPC展開方式です。利用者の操作はほとんど変わらず、管理者側の設定や運用をよりシンプルにし、セットアップの高速化や進捗の見える化を実現します。

企業で新しいパソコンを導入するとき、情報システム部門(情シス)にとって大きな負担となるのが「キッティング」です。

Windowsの初期設定や業務アプリの導入、セキュリティ設定の適用などを実施し、社員がすぐに利用できる状態にする必要があります。

数台であれば対応できますが、数十台、数百台となると大きな作業になります。

Microsoftは、この作業を自動化する仕組みとして「Windows Autopilot」を提供してきました。

そして近年、その新しい展開方式として機能強化が進められているのが、

Windows Autopilot Device Preparation

です。

ひと言でいうと、Autopilot Device Preparationは、

「利用者の操作はほとんど変えずに、管理者側の端末展開をよりシンプルにした新しいAutopilot」

と考えると分かりやすいでしょう。

Microsoftは、Windows 11のユーザー主導型セットアップにおいて、Autopilot Device Preparationの活用を推進しています。

そもそもWindows Autopilotとは?

Windows Autopilotを簡単に言えば、

「新品のパソコンを社員に渡し、会社のアカウントでサインインしてもらうだけで、業務に必要な設定を自動的に適用する仕組み」

です。

従来であれば、パソコンを購入した後、情報システム担当者が一度開封して、

  • Windowsの初期設定
  • Microsoft 365 Appsのインストール
  • セキュリティ設定
  • 業務アプリのインストール
  • 会社で利用する各種設定の適用

などを行ってから社員へ渡す必要がありました。

Autopilotを利用すると、

PCを購入
 → 社員へ直接配送
 → 電源を入れる
 → 会社のIDでサインイン
 → 自動セットアップ
 → 業務開始

という運用が可能になります。

いわゆる「ゼロタッチ展開(Zero Touch Deployment)」を実現する仕組みです。

「OOBE」とは?


Autopilotを理解するうえでよく登場する言葉が「OOBE」です。

OOBEは「Out-of-Box Experience」の略で、

新品のパソコンを初めて起動したときに表示される初期設定画面

のことです。

言語の選択やネットワーク接続、Microsoftアカウントや会社アカウントへのサインインなどを行う画面を見たことがある方も多いでしょう。

Autopilotは、このOOBEの中で会社用PCとして必要な設定を自動的に適用します。

新しい「Autopilot Device Preparation」とは?


Autopilot Device Preparationも、利用者から見た動きは大きく変わりません。

基本的には、

PCを購入
 → 社員へ直接配送
 → 電源ON
 → 会社IDでサインイン
 → 自動セットアップ
 → 業務開始

です。

「それなら従来のAutopilotと同じでは?」と思うかもしれません。

その通りで、

社員から見た使い方はほぼ同じです。

大きく変わったのは、情報システム担当者が管理する裏側の仕組みです。

MicrosoftはDevice Preparationを、

  • より高速なプロビジョニング
  • シンプルな構成
  • 展開状況の可視化

を実現する新しい展開方式として位置付けています。

従来のAutopilotとの違い


従来のAutopilotでは、

  • Autopilot Deployment Profile
  • Enrollment Status Page(ESP)
  • デバイスグループ
  • アプリ配布設定

など複数の機能や設定を組み合わせて構成するケースが一般的でした。

Autopilot Device Preparationでは、

Device Preparation Policyを中心に、必要なアプリや設定を関連付けて管理する

考え方になっています。

Microsoftの構成例でも、管理者は主にDevice Preparation Policyとセキュリティグループを活用して展開環境を構築します。

また、従来のAutopilotではPCをAutopilotデバイスとして事前登録する必要がありました。一方、Device Preparationでは基本的にこの事前登録が不要です。
なお、Device Preparationでは、OOBE中に適用できるアプリやPowerShellスクリプトには上限があるため、大規模なアプリ展開については設計が必要です。

従来より構成が理解しやすく、管理しやすくなった点が特徴です。

PCの設定反映を速くする「Enrollment Time Grouping」

 
新しい仕組みの重要なポイントが、

Enrollment Time Grouping

です。

従来のAutopilotでは、PCをIntuneへ登録した後、

  • このPCは営業部のPCか?
  • このPCは開発部のPCか?
  • どのアプリを配布するのか?

などを判定するために動的グループを利用するケースが多くありました。

環境によっては、グループ評価に時間がかかることがあります。

Device Preparationでは、Enrollment Time Groupingによって、展開時点で対象となるグループを確定しやすくなりました。

その結果、

PC登録
対象グループ確定
必要な設定やアプリ配布

という流れで処理できるため、動的グループ評価の完了待ちに依存する構成を減らすことができます。

これにより、セットアップ時間の短縮や展開の安定化が期待できます。

セットアップ状況も確認しやすくなる

 

パソコンの自動セットアップで困ることの一つが、

「なぜセットアップが止まっているのかわからない」

という問題です。

Device Preparationでは、この点も改善されています。

管理者は、Device Preparationの展開レポートから、

  • セットアップ進捗
  • アプリのインストール状況
  • PowerShellスクリプトの実行状況

などを従来より詳細に確認できます。

また、社員側にも進捗状況が分かりやすく表示されるため、現在どの段階なのかを把握しやすくなりました。

つまり、

「自動化するだけでなく、自動化が正常に進んでいるか確認しやすくなった」

ことも大きな改善点といえます。

 

すぐに従来Autopilotをやめる必要はない

 

ここは注意が必要です。

Autopilot Device Preparationは、現時点では従来のAutopilotを完全に置き換えるものではありません。

例えば、

  • Pre-provisioning
  • Self-deploying mode
  • Microsoft Entra Hybrid Join
  • Autopilot Reset
  • Windows 10端末の展開
  • Autopilotによる共同管理(Co-management)

などは、引き続き従来のWindows Autopilotが必要です。

Microsoftも、新旧のAutopilotを同じ組織内で併用できるとしています。

そのため、

既存環境をすべて作り直す必要はありません。

例えば、

新しく購入するWindows 11 PC Autopilot Device Preparation

既存のHybrid Join環境 従来Autopilotを継続

といった段階的な移行が現実的です。

 

Device Preparationが向いている企業

 

次のような企業では、導入効果を期待できます。

  • Microsoft Intuneを利用している
  • Windows 11を中心に利用している
  • Microsoft Entra ID Joinを採用している
  • 新規PC導入やリプレースが多い
  • ゼロタッチ展開を推進したい

 

Device Preparationが向いていないケース


一方で、次のような環境では従来Autopilotの継続利用も検討すべきでしょう。

  • Hybrid Joinが必須
  • Pre-provisioningを利用している
  • Windows 10端末が多い
  • Co-managementを利用している

Device Associationで、より安全なPC展開へ


Windows Autopilot Device Preparationには、新たにDevice Associationという仕組みが追加されました。

これは、Windows 11 PCを事前に自社のMicrosoft Entra IDテナントと関連付けておく仕組みです。
TPMを利用して端末を確認し、組織との関連情報をUEFIに保持することで、PCの初期セットアップ前から「自社で利用する端末」であることを確認できます。

従来のWindows Autopilotにも、ハードウェア情報を事前登録して企業の端末として扱う仕組みがありました。
Device Associationでは、TPMを利用して端末そのものを確認し、組織との関連付けをUEFIに保持する点が大きな特徴です。

これにより、

PCを事前登録 → 利用者へ渡す → 電源ON → 会社アカウントでログイン → 自動セットアップ → 業務開始

という流れを、より安全に実現できます。

また、Device Associationは端末導入時だけでなく、ISMSなどで求められるデバイスのライフサイクル管理にも活用できます。

例えば、

調達・登録 → 利用開始 → 運用・再セットアップ → 利用終了 → Association解除 → 廃棄・譲渡

という端末の状態を明確に管理できます。

なお、Windowsを初期化しただけではDevice Associationの情報は消えないため、端末を廃棄・売却・他社へ譲渡する際にはAssociationを解除する、という運用ルールを設けることも重要です。

情報システム部門にとって何がうれしいのか?


今回の変更を簡単にまとめると、

利用者の操作はほとんど変えずに、情報システム部門側のPC展開をシンプルにする

というものです。

従来のAutopilotでも、

「PCを社員へ直接送って自動セットアップする」

ことは実現できていました。

しかしDevice Preparationでは、さらに

  • 設定をシンプルにする
  • 設定反映を速くする
  • セットアップを安定させる
  • 展開状況を見える化する
  • トラブルシューティングを容易にする

方向へ進化しています。

一言で表現するなら、

「利用者から見た操作はほぼ同じ。管理者側の仕組みを簡素化・高速化・可視化した新しいAutopilot」

と言えるでしょう。

Microsoft IntuneとWindows 11を利用している企業では、PC更新やWindows 11への移行に合わせて、Autopilot Device Preparationの検証を始める価値があります。

特に数十台、数百台単位でPCを導入・交換する企業では、

「社員がPCを受け取り、自分で電源を入れるだけ」

という運用を実現しやすくなり、情報システム部門のキッティング負荷を大きく軽減できる可能性があります。

参考リンク

Autopilot Device Preparation と従来の Windows Autopilot の比較
https://learn.microsoft.com/ja-jp/autopilot/device-preparation/compare

Autopilot Device Preparation の新機能
https://learn.microsoft.com/ja-jp/autopilot/device-preparation/whats-new

Autopilot Device Preparation の要件
https://learn.microsoft.com/ja-jp/autopilot/device-preparation/requirements

Autopilot Device Preparation FAQ
https://learn.microsoft.com/en-us/autopilot/device-preparation/faq
著者紹介
山田幸志
山田幸志

MS365認定アドミニストレーターエキスパート、情報処理安全確保支援士。
Microsoft 365を中心としたクラウド、セキュリティ、インフラ領域を専門とするITエンジニア。
でも得意分野はLinux/仮想化。

日本最古のITコミュニティの幹事や、日本最大のネットワークオペレーター会議の実行委員長、セキュリティイベントやGadgetイベント発起人など、数多くの技術コミュニティの運営に携わる。コミュニティ活動を通じて幅広い知見と実践的なスキルを磨き、現場で得た経験や技術情報を発信している。

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